気管支炎は、気管と気管支が感染症によって炎症を起こす病気
気管支炎は、気管と気管支(気管から枝分かれする気道)にウイルスや細菌が感染し、炎症が起こる病気です。かぜの症状がみられたあとに咳が出る場合には、気管支炎が疑われます。通常の気管支炎では、ウイルスが感染することで起こります。
気管支炎の原因となるウイルスは、インフルエンザウイルスをはじめとした、環境によく存在するウイルスです。ウイルス感染が早く治った場合でも、感染によって気道に生じた炎症が残ってしまい、症状が続いてしまうこともあります。
また、気管支炎は細菌が原因になることもあります。原因となる細菌は、マイコプラズマ、クラミジア、百日咳菌などです。ウイルス性の上気道炎が起きたあとに、細菌性気管支炎を発症することもあります。
気管支炎には、発症から治癒までの期間が比較的短い急性のものと、症状が長く続く慢性のものがあります。
急性の気管支炎の場合、症状は数日~数週間にわたって症状が続くのが一般的です。ただし、医学的には90日くらいまで症状が持続するものも、急性気管支炎として扱います。一般的に「気管支炎」という場合には、急性気管支炎のことを指すことがほとんどです。
一方、慢性の気管支炎では、専門的には「せきとたんが、おもに冬季に3カ月以上ほぼ毎日続く状態が2年以上連続していて、それがほかの病院によるものではない」ときに、慢性気管支炎と診断されます。
気管支炎の症状
気管支炎の一般的な症状は、次のとおりです。
- 咳
- 鼻水
- のどの痛み
- 体のだるさ
- 寒気
気管支炎では、いわゆるかぜの症状がみられます。咳の絡まない乾いた咳が出始めたら、気管支炎の危険信号です。
咳は最も治りにくい症状で、治るまでに2~3週間以上かかることもあります。これは、ウイルスが気管支内面の上皮細胞を傷つけてしまい、その修復に時間がかかるためです。
ウイルスが原因の気管支炎では、咳と一緒に白い粘液が出ることがよくあります。この白い粘液は、しばしば緑色や黄色に変化しますが、この変化は炎症に関与した細胞によることがほとんどです。
細菌による気管支炎の場合は、痰の量が増え、ネバネバとした膿状の痰が出るのが特徴です。
気管支炎の検査と診断
気管支炎は、咳や痰といった患者さんの症状に基づいて診断をすることが多い病気です。そのため、気管支炎が疑われるからといって、何かの検査をすることはあまり多くありません。
しかし、インフルエンザウイルスやマイコプラズマ、百日咳菌の感染が疑われる場合には、これらの治療に適した薬を処方するために、のどや鼻からサンプルを採取することがあります。
また、診療の際には、気管支炎と似たような症状が現れる肺炎や肺がんと気管支炎を明確に区別しなければなりません。そのため、これらの病気と気管支炎を区別するために、検査を実施することがあります。
肺炎が疑われる場合には、胸部X線検査や聴診器での診察、痰の検査を行うのが一般的です。咳が2か月以上続く場合は、肺がんなどの肺の病気になっていないか調べるために、胸部X線検査、胸部CT検査を行います。
気管支炎の治療法
ウイルスによる気管支炎では、対症療法(辛い症状に対処する治療)が中心となります。咳が強い場合には「鎮咳薬」、痰が絡む場合には「去痰薬」というように、患者さんの症状に合わせた薬を使用します。治療の際、患者さんは体を温かくして安静を保ち、十分に栄養を摂ることも大切です。
一方、細菌による気管支炎では、黄色い膿を持った痰が大量に出るようになります。大量の痰が出ているときに鎮咳薬を使ってしまうと、出すべき痰が出なくなってしまい、かえって呼吸が辛くなることもあります。そのため、症状に合わせた薬をやみくもに処方するのではなく、痰の量や性状、患者さんの全身状態を総合的に評価して薬を処方することが必要です。
また、気管支炎の初期の治療では、病原菌を特定することが難しいこともあるため、病原菌を特定する前に抗菌薬を処方することもあります。
気管支炎にならないための日常生活の注意点
気管支炎にならないためには、かぜ症候群と同じように、日頃から感染予防をすることが大切です。具体的には、次のポイントを押さえた日常生活をおくりましょう。
- マスクの着用
- 手洗い、うがいの積極的な実施
- 咳エチケットの徹底